映画「約束の旅路」  #1 映画の時代背景

映画「約束の旅路」 #1 映画の時代背景


19世紀・20世紀ともにユダヤ人は大変な迫害を受けます。
屋根の上のヴァイオリン弾き」に代表される帝政ロシアの19世紀後半からのポグロム
シンドラーのリスト」・「戦場のピアニスト」に代表される20世紀のホロコースト
合わせて1000万人近くのユダヤ人がただユダヤ人であるという理由で虐殺されています。
19世紀後半からのポグロムために、ユダヤ系ロシア人のアメリカ移住は250万人以上になっています。
20世紀のホロコーストでは、ヨーロッパ全土からユダヤ人がドイツ・ポーランドに集められて
600万人のユダヤ人が虐殺されました。
第二次世界大戦前からヨーロッパ各地では、反ユダヤ主義運動が起こっており反ユダヤ主義運動とナチスホロコーストのために、
20世紀の初めから1940年頃までにアメリカに移住したユダヤ人は200万人を超えています。
ヨーロッパのユダヤ人は大勢はアメリカに移住しましたが、一部は18世紀頃からパレスチナに移住しています。
フランスでのドレフェス事件を契機に、ユダヤ人の国家を建設する運動が拡大していきます。
当初はアフリカ・マダガスカル島・トルコと候補がありましたが、最終的にはパレスチナへ決定されました。
ユダヤ人国家建設運動」と「ユダヤ教約束の土地への帰還」と言う政治運動と宗教運動が結び付き本格的なイスラエル国独立運動シオニズムとなります。
1948年独立後のイスラエル国家は民主主義の政教分離の世俗国家になるので、ユダヤ人国家建設は、政治運動主導に宗教運動が付帯された国家になっています。


1948年イスラエルの国家独立とともにイスラムアラブ諸国と軍事衝突(中東戦争)が始まります。
イスラエルイスラムアラブ諸国の衝突は、一神教の世界ではたいへんな大変革の出来事です。
それまで千数百年に渡りキリスト教ユダヤ人(ユダヤ教)を迫害してきましたが、ここからキリスト教ユダヤ人を援助する方にまわります。
それまで千四百年に渡りイスラムユダヤ人(ユダヤ教)を経典の民として共存してきましたが、
1948年を境に一転イスラムから見たユダヤ人は抹殺すべき民族として、イスラムアラブ諸国イスラエルの国家・民族の生存権を認めていません。


今日まで四度の中東戦争を繰り返しています。
イスラエルの主張を書いてみます。
1948年のユダヤ人国家建設と同時にパレスチナではアラブ民族のパレスチナ人が土地を追われ難民となりました。
パレスチナ難民をアラブ諸国は受け入れるべきだと言います。
イスラエルアラブ諸国ユダヤ人難民を積極的に受け入れているからーーー。
1948年以前にはアラブ諸国にいるユダヤ人たちは少数ながらも細々生きて住んでいました。
中東戦争が始まってからアラブ諸国にいるユダヤ人たちが迫害を受け難民化しているのです。
アラブ諸国にいるユダヤ人難民を引き取る作戦がこの映画のモーセ作戦で後にはソロモン作戦を実施します。

この映画に出てくるエチオピアを無事脱出したファラシャ(エチオピアユダヤ人)が、スーダンの国で黒人系ユダヤ人と分かると殺されると言うのは、1948年以降イスラムアラブ諸国の中でユダヤ人が難民化しているからです。

映画の時代背景を知ると映画が分かりやすくなります。